転職ご相談事例
漢方や薬膳、食事療法など、薬を用いない治療を仕事にしたい
- 明正
- 32歳、男性
はじめまして。 調剤薬局勤務の明正です。
近い将来に転職をしたいので、ドラおじさんにアドバイスをいただきたいと思い、ご連絡いたしました。
食事療法や湯治など、薬物を用いない治療に興味を持ち、実際に参加してみたところ、薬物治療に対する考え方が劇的に変わりました。そのため、「転職をしたい」と考えるようになったのです。
転職先として製薬以外の研究・開発、薬膳・漢方を取り扱っている薬局や病院、もしくは薬剤師資格とは関係のない仕事を考えております。
というのも、薬物治療ありきではなく、食事・栄養による自己免疫力や自己治癒力を高める本来の治療に興味を持ち共感したからです。
薬を使用しても対処療法にすぎず、薬を辞めると元に戻ってしまうのは治療なのでしょうか?薬を渡すだけではなく、食事療法など他のアプローチをもっと積極的にしていくべきではないでしょうか?このように、現在の治療や薬局のありかたそのものに疑問を抱いてしまったためです。
研究職の内情や就職方法、こちらのサイトに記載されている以外に、漢方薬を取り扱う仕事についての補足などがあれば教えてください。取得していると転職に有利な資格とかありますか?また、医薬品関係にあまり触れることはないけれども、薬剤師としての資格を活かすことができる仕事はありますでしょうか。
お忙しいと思いますが、お返事をいただけるとうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。
- ドラおじさん
- 薬剤師専門の大手人材紹介会社に勤務していたアドバイザーで、薬剤師転職のプロ。見た目はメタボだけど仕事はめちゃくちゃ頼りになるおじさん。(ドラおじさんの詳細はこちら)
お問い合わせありがとうございます。
明正さんの考えをまとめると、「製薬以外の研究・開発職」「漢方薬局」「薬剤師とは関係のない仕事」のいずれかで、薬物中心の治療ではなく食事や栄養のアプローチから身体の本来の力を使って病気を予防・治療する仕事に就きたいとのことですね。
まず、「製薬以外の研究・開発職」についてですが、研究職はそもそも求人自体が少なく、選考ハードルはかなり高いです。それに加えて、明正さんは製薬以外の研究と考えていらっしゃるので、応募できる求人件数はかなり少ないかと。
たとえ勤務地や給与などの待遇面にこだわらないとしても、希望にあった求人は見つけにくいでしょう。したがって転職活動は長期戦になると考えておいた方が良いです。
次に「漢方薬局」についてです。漢方薬局では患者様の体質を改善し、自然治癒力を高めるために漢方薬を用いるので、明正さんが理想としている薬剤師の姿に合致しているといえるのではないでしょうか。
漢方薬局で働いている薬剤師さんは、患者様のことを第一に考える良い方が多い印象がありますよ。漢方薬を取り扱うだけでなく、薬膳料理を提案したり、生活習慣を改善するセミナーを開催したりできるので、薬物治療以外のアプローチで患者様を健康にしていくお手伝いができます。
また、漢方薬局でなくても健康相談薬局として機能しているところであれば、管理栄養士と協働して食事療法に力を入れることもできるでしょう。
取得しておくと有利な資格は、正直ありません。ただ、業務に活かせる資格はあります。薬膳関連や漢方カウンセラーなんかがそうですね。患者さんにも「この薬剤師さんはこの分野に詳しいんだ!」と信用してもらえますよ。
最後に「薬剤師とは関係のない仕事」についてです。薬剤師にこだわらなければ、いくらでも仕事の幅が広がるかというと、実はそんなこともありません。食品メーカーや健康食品メーカーで薬学の知識を活かしたポジションを狙うのもひとつだと思いますが、そもそも求人があまりないかと。
病気の予防や根本治療を広げるための活動をするのであれば、コラム執筆や講演・セミナーを開催するといったことが浮かびますが、これだけで食べていくだけの稼ぎを得るはなかなか難しいですよね。
現実的な話をすると、薬から離れるとお金にならない、つまり儲からないんです。だから、そっちの分野に力を入れる職種や求人があまりないんですよね。あまり有益な打ち手を共有できず恐縮です。
- ひとみ
- 薬剤師、ライター。オランダ在住。(詳細はこちらのページで)
実は私も、西洋薬を使った薬物治療は好きではありません。それもあって、新卒時は薬局や製薬会社ではなく化粧品会社を選んで就職しました。
ただ、結婚して転職するとなったときに求人を探したところ、調剤薬局は女性が働きやすく給与も高かったんです。それで結局、西洋薬をメインに取り扱う一般的な調剤薬局に転職しました。
明正さんの気持ちはよく分かります。私も「こんなに薬漬けにしても根本治療にはならないのに…」と思いつつ、投薬していました。そこに疑問を感じ、行動する姿勢は素晴らしいなと思います。
前置きが長くなりましたが、明正さんは「分子整合栄養医学に力を入れている薬局」を探してみるのがいいかもしれません。
ご存知かもしれませんが「分子整合栄養医学(オーソモレキュラー)」について簡単に説明しますね。
慢性疾患の多くは、分子レベルでの栄養素の不足が原因と考えられています。またこの栄養素の量は、その人のライフスタイルや性格・体質などによって至適濃度が異なるのです。
分子整合栄養医学では、血液検査から患者一人ひとりの体質などを総合的に評価し、不足している栄養素をサプリメントや食事療法によって、分子レベルから補っていきます。不足している栄養素を補うことで、慢性疾患を根本的に治療するのです。
ただ、分子整合栄養医学のみを扱う薬局は恐らく存在せず、漢方薬局や一般調剤薬局の一部に分子整合栄養医学に力を入れている所がある、と考えておいた方が良いと思います。とはいえ、そのような薬局に転職すれば、対処療法だけではなく根本治療を兼ねた薬剤師としての指導を行えるので、明正さんがやりたい仕事につながるのではないでしょうか。
また、分子整合栄養医学の資格も存在するので、そちらを目指すのもよいかもしれません。
ちなみに、もし明正さんが漢方や分子整合栄養医学をメインに取り扱う薬局に転職した場合、年収は大きく下がると考えておいたほうがよいでしょう。詳しくはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
- 最終更新日:2020年6月26日
- カテゴリー:転職ご相談事例
- タグ:30代男性薬剤師, 薬剤師の企業等への転職, 調剤薬局への転職