「薬剤師なら仕事はラクだし、お給料も高くて安定してるよ」ってお母さんが何回もしつこく言ってくるんだけど、これって本当なの？

お給料が高いって、どのくらい高いの？お金持ちになれるの？まだ将来なりたいものがはっきりしてないから、今ちょっとだけ薬剤師が気になってるんだよね。

平均と比べたら薬剤師のお給料は高いって言えるかもしれないね。でも、仕事がラクっていうのは違うかな……。ラクして稼ぎたいっていう理由だけで気になっているなら、薬剤師はオススメしないよ！

1. 薬剤師のお給料は平均と比べたら高い

薬剤師って、お給料高いんでしょ？

お給料が高いって感じるかどうかは、その人の家族構成や生活スタイルによっても変わってくるよね。お給料に比べて出ていくお金が多いと、高いって感じないだろうし……。

でも普通の人よりはもらえるんでしょ？

う〜んと、じゃあ、普通のサラリーマンと薬剤師の平均年収を比べてみよっか。

平均年収……？なにそれ？

1年間にその人が稼ぐお金の合計を「年収」っていうんだよ。大勢の人でその平均を出したものが「平均年収」。

なんで平均を比べるの？

たとえば会社づとめの人の場合、同じ職業でも、もらえるお金は年齢とか仕事内容、働く地域なんかによってバラバラなんだ。だから平均を出すことで、だいたいどれくらいもらっているのか、っていうのが見えてくるんだよ。

へ〜、そうなんだ。

ということで、まずは「一般会社員の平均年収」。男性は約520万円、女性は約280万円。

……。

なんか金額だけ言われてもよく分かんないね。でも、どうして男性と女性で平均年収が全然違うの？

お、いいところに気が付いたね！ 一般的に、役職が上がるほどお給料も高くなるんだよ。

役職って？

「社長」とか「部長」とか、聞いたことあるでしょ？会社の中でも偉い、みんなをまとめる人だよね。そういう立場のことを役職って言うんだよ。日本の場合、その役職に就いているのは８割以上が男性なの。

男ばっかりじゃん！ なんで？！

理由は色々。女性は結婚や出産をきっかけに仕事を辞めてしまう人が多いから、というのも一つの理由だね。例えばだけど、部活の顧問がころころ変わったら困らない？

困る！というか……今までそんなこと一度もないよ（笑）

同じように会社も、まとめる立場である役職の人にすぐに辞められたら困るから、女性は役職に就きにくいんだよ。こういう理由から女性の方が収入が少なくなっているの。

薬剤師もそうなの？

それがね、薬剤師の場合は男女差がそこまでないんだよね。「薬剤師の平均年収」は、男性が約540万円で、女性は約430万円だよ。

え！すごい！女性は一般会社員の1.5倍くらいもらってるってことだよね！？

薬剤師の場合は、結婚や出産で辞めないことが多いの。そもそも薬剤師は女性の方が多いから、結婚や出産で辞められると薬剤師が足りなくなっちゃうんだ。

だから会社側は、女性にできるだけ長く仕事をしてもらえるようなサポートをしているの。例えば、結婚して引っ越すことになった場合、旦那さんの仕事先の場所に合わせて店舗を変えたり、妊娠した場合は出産や子育ての支援をしたり。

へ～！めっちゃいいね！

だから、女性の薬剤師は男性と同じだけ働いて、同じだけ稼ぐこともできるんだよ。それにパートの時給もすごく高いの。

私のお母さんがパートで働いていたから知ってるよ！時給は、パートとかアルバイトとかの人が１時間にもらえるお給料のことだよね。

そう！薬剤師の女性がパートに出ると、だいたい時給2500円くらいもらえるよ。

え、うそ！高校生のお姉ちゃんがアルバイトしてるけど、時給900円って言ってたのに……。じゃあさ、女性の薬剤師さんってセレブな生活を送ってるの？

セレブ……ではないとは思うけど、まあでも普通の人よりは余裕のある暮らしをしていると思うよ。

たとえば、子どもができたときに良い教育を受けさせてあげられたり、少し高い家が買えたり、老後のために貯金できる余裕があったり。

うーん……遠い未来の話で、ちょっと分かんないや。

そうだね、ごめんごめん。お給料が高いと自由に使えるお金が多くなるの。自由なお金が多ければ、外食にも旅行にもたくさん行けるようになるよね。高い服とかバッグとかも買えるし。美容にお金を使うこともできるよね、エステとかさ。

いいな～、うらやましい！やっぱり薬剤師ってお金持ちなんだねっ♪

お給料が平均より高ければお金持ち、っていうのは間違いかな。自由なお金を全部使っちゃったら貯金できないし、それだとお金持ちとはいえないよね。

何にどうお金を使うのかは人それぞれだから、同じお給料でも高いと感じる人もいれば低いと感じる人だっているんだよ。

そっかぁ。でも薬剤師になっていっぱい稼ぎたいな！

２. 薬剤師の仕事はべつにラクじゃない

やっぱり薬剤師は、お給料高い方なんだね！ それで仕事までラクなんでしょ？ 最高じゃんっ♪

ちょ、ちょっと待って！ 正直に言うけど、ラクじゃないよ！

うそ！ お母さんが「薬剤師はラクだ」って言ってたよ？

ううん……なんでラクだと思われてるんだろう……？

「お医者さんや看護師さんは24時間患者さんと向き合っていて大変そうじゃない？でも薬剤師さんは薬局で薬の準備をしているだけで、肉体労働じゃないからラクだと思うよ」って言ってた。

な、なるほどね……。たしかに医師や看護師と比べたら、体力的には薬剤師の方がラクかもしれない。でも薬剤師だって患者さんの命を預かっているんだよ。

薬を間違って渡したりしたら、最悪の場合、死んでしまうことだってあるし。ミスがあったら、患者さんやその家族から訴えられることもあるし。

そうなんだ！ ミスが許されない大変な仕事なんだね……。

それに、病院で働く薬剤師は夜勤をしないといけない場合もあるし、全く肉体労働がないわけじゃないよ。

でもまあ、勤務先によってはラクなポジションがあるのも事実……。

なんだ！ やっぱりラクなんじゃん！

なかには、自分からは何も動かずに、ただ与えられた仕事を何の工夫もなく終わらせていくだけの人もいるよ……。でもこれからの時代は機械化が進んでいくから、自分で考えて動く人間にならないと、薬剤師として生き残ることはできないだろうね。

それに、薬剤師の仕事にだって大変なことはあるんだよ。特に人間関係……。

人間関係？ 仲が悪いの？

薬剤師もみんな人間だから相性もあるし、仕事のやり方でもめることも多いんだ。調剤室って狭いしね、イライラが結構たまりやすいんだよ。

それから薬剤師同士だけじゃなくて、医師や看護師、患者さんやその家族とも、いい関係を築いておかなきゃいけないの。

なんで？

例えば、患者さんに薬を渡す時に話をするんだけど、症状を聞いて薬の効果が強すぎると思った場合、「もう少し弱い薬に変更した方がいいんじゃないか」って、薬剤師から医師に薬の変更を提案することもあるんだ。

でも、医師との間に信頼関係が築けていないと、提案をすんなり受け入れてくれないんだよね。「薬剤師ごときが出しゃばるな！」って思われちゃうことも少なくないんだよ。

えー、ひどい……。

あと、患者さんとのコミュニケーションもラクじゃないよ。中には気難しい患者さんもいるから。

まぁ、だいたいは親身になって話を聞いてあげると満足してれるんだけどね。きっといろいろ聞いてほしいんだと思う。でも急いでいる患者さんに同じ対応をしたら、「早くしてよ！」って怒られることもあるよ。

えぇっ！ どうしたらいいの！？

仕事を続けていけば自然と分かるようになることもあるけど、最初はどの患者さんにどう接するべきか判断することは難しいかもしれないね。

薬剤師って、ただ薬局の中にこもって薬を準備しているだけなイメージがあったんだけど、いろんな人とコミュニケーションを取らないといけない仕事だったんだね……。

そうなの！ だから薬剤師は「高いコミュニケーション能力」が必要なんだよ。薬剤師は決してラクな仕事ではないってことが分かってもらえたかな？

た、大変よく分かりました……。

３. 薬剤師は安定していて自由が利く

お母さんが言っていた、「薬剤師は仕事が安定している」っていうのは、どういう意味なの？

「仕事が安定している」っていうのは、お給料が一定以上安定してもらえて、年齢に関係なく働けるような仕事のことを言うかな。

それってそんなに大事かな？お給料がたくさんもらえれば、それでいい気がするけど……。

大事だよ！ 一流スポーツ選手なんかはすごくお給料が高いけど、ケガをしたらクビになったり、そうでなくても成績が悪いとお給料をうんと減らされたりするんだよ。

それにたいていは、歳をとったら続けられないしね。ライバルもいっぱい居るし。仕事がなくなったらお金が入ってこなくなるから、生活に困っちゃうかもしれないよね。

そっかぁ。それを聞くと「安定している」って大事なんだね。

そうだね。薬剤師の場合は成績で大きく左右されることもほとんどないし、元気であればいくつになっても続けられる仕事だし。

仕事がなくなることもない？

多分、ないと思うよ。健康に関する悩みって人間なら誰でも持ってるものだし、社会や環境がどれだけ変わってもそこは変わらないしね。

それに女性の場合は、結婚や旦那さんの転勤で引っ越すことになっても、新しい場所ですぐに就職先が見つかりやすいと思う。

あ！ でもそれって都会での話でしょ？ 田舎は仕事がないから、若い人がどんどん都会に出ているって、社会の授業で習ったよ。

それがね、薬剤師の仕事なら全国どこにでもあるんだよ。むしろ田舎の方がお給料が高かったりするの。

そうなの！？ なんで？

今話してくれた通り、田舎では若い人が減って高齢者が取り残されているの。だから田舎の病院や薬局は人が足りなくて、人を集めないといけないから都会よりも条件が良くなるんだよ。

へ～、でも田舎暮らしは嫌だなぁ……。

そう？ 私の友達で「貯金したいから」って言って、田舎に数年間住んでいた薬剤師が実際にいるんだよ。

貯金のために？

そう。あと、沖縄の離島で期間限定で働いていた薬剤師もいて、週末はビーチに行ったりダイビングをしたり、地元の方とも仲良くなったりしていて楽しそうだったよ。

それは楽しそう……！

でしょ？ 私もそれを聞いて「田舎の薬剤師もいいな」って思ったよ。都会では経験できないようなことも経験できそうだし。

そっかぁ。なんか自由でいいね！

そうなの！ そういう「自由な働き方ができる」っていうのが、薬剤師になる大きなメリットのひとつだよね。

私の友達には、オシャレなカフェで働くことが好きな薬剤師もいてね。カフェの店員だけだと収入が少なくて生活が厳しいからって、薬剤師の仕事と掛け持ちしているの。

それから、バレエの先生をしている薬剤師もいるよ。バレエの先生は週末だけで、平日は薬剤師として働いているんだ。

すごい！ そんな働き方ができるんだ！？

そう！「他にも夢があるけど食べて行けないから諦める」なんてことしなくても、薬剤師になれば叶えることも可能なんだよ。

他にも薬剤師として１年間がむしゃらに働いて、稼いだお金で１年間海外で自由に生活するっていう友達もいるよ。１年経ったらまた日本に戻って、また１年間働いて……っていう感じで。

そんな生活ができるの！？うらやまし〜！

こんな働き方ができるのも、やっぱり薬剤師免許を持っているからだよね。

い～な～。薬剤師免許、欲しくなっちゃった。

だけど、今日話したことはあくまで今の話。10年後や20年後も同じように働けるかどうかは分からないから、その点だけは注意してね。