ドラおじコラム
薬剤師の年収がアップしやすいスキル・経験って何? 転職のプロに聞いてみた
こんにちは!薬剤師のみどりです。
あなたは、「薬剤師としてどういうスキルを磨けば、年収が上がるのだろう? 転職に有利にはたらくのだろう?」と考えたことはありませんか? そして毎日毎日、目の前の仕事をこなすのに精一杯になっているけれど、「果たしてこれが自分のキャリア形成に役立っているのだろうか……」と疑問を感じながら働いていたりしないでしょうか?
今回、私を含めた多くの薬剤師さんが気にしている「年収が上がりやすいスキルや経験」について、過去400人以上の薬剤師の転職支援をおこなってきた経験を持つ、薬剤師転職のプロ「ドラおじさん」にお話を伺ってきました。
登場人物紹介
- ドラおじさん
- 薬剤師専門の大手人材紹介会社に勤務していたアドバイザー。薬剤師転職のプロ。見た目はメタボだけど仕事はめちゃくちゃ頼りになるおじさん。(ドラおじさんの詳細はこちら)
- みどり
- 当サイトのナビゲーターで、都内の製薬会社でDI・学術担当として従事している設定の薬剤師。中の人は薬剤師が監修してます。全国の悩める薬剤師たちを代表して、きわどい質問をドラおじさんにバンバンぶつけていきます!
それでは、今日のテーマは「薬剤師の年収交渉がしやすいケース」ということで、ドラおじさんの過去の転職支援のご経験をもとにお話を伺えればと思います。
はい。よろしくお願いします。
1.コミュニケーション能力が高い薬剤師は年収が上がる
薬剤師が転職するときに年収交渉がしやすいスキルっていうのはいくつかあると思うんですけど、まずは簡単なところから教えてもらっていいですか?
はい。採用担当に響きやすいスキルというのはいくつかあるんですが、今どの薬局でも共通して求められているのは「コミュニケーション能力」です。これが秀でている薬剤師さんは、年収交渉がしやすいです。
へー、コミュ力ですか。金額で言うと、いくらぐらい年収アップできるものなんですか?
規定より+20万円アップくらいですね。たとえば、コミュニケーション能力が高い人が、年収600万円で出ている求人に応募した場合、交渉によって年収 620万円くらいまでは上げられるという具合です。
なるほど。あの、「コミュニケーション能力が高い」っていうのは、具体的にはどのくらいのレベルなら高いって言えるんですか?
これは、普通に話すのがうまいとか、患者さんに好かれているとか、そのレベルで大丈夫です。
えっ、本当にそれだけで良いんですか?? なんか、ずいぶんハードルが低い気がするんですけど。
そう感じるのも無理はないですね。これはどうしてかというと、そもそも薬剤師さんのコミュニケーション能力が普通の人よりも低いと思われているからなんです。
実は薬剤師さんの場合、円滑にコミュニケーションが取れる時点でもう「優秀」っていう評価になるんですよ。要は、いま私たちがしているみたいに、普通にビジネス的な会話ができたら「あ、キミ優秀だね」って言われるんです。
いや「優秀」って……普通に話してるだけですけど(笑)
んーまあこれは人材市場に流れてくる人に限られるかも知れませんけど、薬剤師さんって基本、ビジネスシーンでの言葉遣いがなってないんですね。
例えば、「わたし」って言えずに「オレ」って言っちゃうとか。あと「御社」って言えないとか。そういう人を実際よく見かけます。
それはひどすぎませんか(笑)
加えて、最近はどの薬局でも「接客」に力を入れ始めていて、どの会社の採用担当に話を聞いても「会話がうまくできる人が欲しい」ということを言われるんですよ。
でも、そういう薬剤師さんってなかなか居ないんですよね。だから、話すのがうまい人っていうのは、それだけで希少価値が高いんです。
なるほど……まあでも確かに、私の友だちを見てみても思い当たるフシはありますね。
そもそも薬局って、応募すればだいたい通るんでしょ?っていう印象がありますし、言葉遣いが悪くて、とか、礼儀がなってなくて、みたいな理由で不採用になることって、薬剤師の場合たぶんあまりないじゃないですか。言ってもやっぱりまだ人手不足ですし。
だからそういう、コミュニケーションがなってない薬剤師が多くてもおかしくないとは思います。
そうですね。あとはおそらく、そういう人は薬局内で叱られたり、指摘されたりする機会があまり無かったんでしょうね。一般的なマナーみたいなものが身についていなくても無理はないと思います。
じゃあ、コミュニケーションに問題のある薬剤師さんが、まともなコミュニケーションを取れるようになるには一体どうすればいいんですか?
これは簡単で、まずは患者さん目線で患者さんの満足度を上げられるようになることですね。たとえば、患者さんが自分からすすんで話しかけてくれる薬剤師とか、指名されるような薬剤師になれれば、コミュニケーションが良くできていると考えてOKです。
なるほど。患者さんから「この薬剤師さんと話せてよかったな」と思われるレベルの仕事をしましょう、ということですね。
そうです。すごく抽象的なんですけどね。話しかけやすそうな雰囲気を作るとか、優しそうな顔をするとか、そういうのも大事ですね。
まあ、それって本気のコミュ障の人にはかなりハードル高い気もしますけどね…….えっと、「患者さん、みんな急いでるんで、あんまり話したくないんですよね〜」みたいな人はダメですよね、当然。
もちろんダメです。そこはちゃんと見極めて、急いでいる人にはちゃんと急いでいる人なりの対応をして、話したそうな人にはちゃんと話聞いてあげる、とか。「なんか隠してるな?」って患者さんには、ちょっとツッコミを入れてみるとか。
そういう、状況に応じた判断がきちんとできる薬剤師のほうが、確実に評価は高いです。でもこれって普通のことなんですけどね……。
いやー、本当にその通りだと思います。
ちなみに、年収交渉の場面でコミュニケーション能力が高いことをアピールするコツみたいなものはありますか? 正直、ちょっと難しいような気がするんですが。
それに関しては採用する側もプロですから、少し話せばすぐに分かっちゃうんですよ。なのであまり意識しなくても大丈夫です。
あえて言うなら、患者に好かれていたことが分かる具体的なエピソードがあると良いですね。例えば「患者さんからおみやげを貰ったことがある」とか、「薬と関係ない家庭の相談を日常的に受けていた」とか。そういう分かりやすい事例があったほうが、評価は上がりやすいです。
2.店舗全体のことを考えられる薬剤師は年収が上がる
コミュ力以外にも、年収交渉がしやすくなるスキルはありますよね。
もちろんです。コミュ力の次は、「店舗全体」のことを考えて仕事をするスキル、ですね。自分の仕事の成果だけではなくて、「店舗全体の成果をどうすれば上げられるか」という発想ができる人。こういう人は年収交渉がしやすいです。
なるほど……でも、そんな人なかなか居なそう。
そうですね。私の感覚だと、そういう発想ができる薬剤師さんは10人中1人か2人くらいしか居ないです。
もう少し詳しく聞きたいんですけど、そういう薬剤師さんって、具体的に何をやってるんですか?
ケースとして多いのは、「人間関係の調整」です。たとえば薬局って、残業を減らさないと薬剤師が辞めちゃうんですよ。だから、どうすればこの薬局の残業が減るか?を考える、とかですかね。
あと、店舗内の良い雰囲気作りができて、他の薬剤師に「この店舗で働けて良かったな」と思わせられる人とか。こういう人は評価が高いですね。
たしかに、こういう人は薬局の経営者だったらめちゃくちゃ欲しい人材ですよね。
そうです。同じ職場で働くメンバーがいかに「辞めたい」と思わせないようにできるか? っていうのが大事です。
このスキルを持っていると、どれくらい年収を上げられますか?
規定より50万円アップ、くらいですかね。やはり先程の「コミュニケーション能力」だけのときよりも大きく上がります。
おー。どうすればこのスキル、身につけることができるんですか?
これは価値観と指向性の問題なので、どこどこに行って勉強すれば身につく、とかそういう話ではないんですね。意識高く前向きに頑張るしかないんです。まずは目の前の仕事を精一杯がんばりましょう、って話ですね。
おじさん、それだとちょっと元も子もないんで……何か、手軽に始められるもので、スキルアップできそうなものは無いですか?
そうですね……では、例えばこんなのはどうでしょうか?
- あいさつのときに、普段よりも大きい声を出すようにする
- 辞めそうになって元気がなくなっている人を、フォローしてみる
- みんなが嫌じゃないレベルの、催しものを主催してみる
- 薬歴の文言を統一して、みんなが書くときの手間を少なくしてあげる
- 在庫管理や受発注の業務に、システムを導入して業務効率を改善する
上から、簡単な順に並べてみました。
おお〜いいですね!「システムの導入」はちょっとハードル高いですけど(笑)でもこれならかなりイメージしやすいです!
3.マネジメントスキルを持っていると年収が上がる
これまで、薬剤師が年収を上げやすいスキルとして「コミュニケーション能力」と「店舗全体を見るスキル」を挙げてもらいましたけど、それ以外にも何かありますか?
はい。その次に来るのが、いわゆるマネジメントスキルですね。
薬局長とか、ドラッグストアの店長のことですか?
そうです。特に、薬剤師が3人とか5人とかの薬局を回して運営してました、プラス受発注とか、レセプトの管理とか、いわゆる管理薬剤師業務をまともにやってましたっていう人。こういう人は今どこでも需要があって、年収交渉しやすいです。
なるほど……でもそれって、やったことがある人、ほとんど居なくないですか?「初めて転職します」みたいな人はまず持っていない経験だと思うんですが。
いや、それがそんなことは無いんですよ。20代の人でもマネジメント経験者は結構いるんです。薬局の薬剤師ってキャリアアップが早くて、大きな企業だと新卒で入って3年くらいで薬局長をやるケースもあるんですよ。
そうなんですか! それはすごいですね。
はい。ただ、「まともにマネジメントしてる人」って言うとそんなに多くない気がしますけどね。薬局って全国に5万5000店舗あるので、一応、5万5000人は管理職が居ることになるじゃないですか。そうするといわゆる、一人薬剤師のところも薬局長になっちゃうんですよね。
そうですよね。その場合は、やらざるを得ないって感じですもんね。
はい。だから1人でやってた場合はマネジメントも何もないので、年収アップにはあまりプラスに働かないんですけど、薬剤師が5人以上いる店舗で薬局長をやったことがあったら、まあまあ市場価値がある、って感じですかね。
だいたいどれくらいの年収アップが見込めるんですか?
普通の薬剤師の相場より50〜100万円くらい高く出るんじゃないですかね。内訳としては、まず基本給のベースアップが月+2〜5万円。加えて、管理薬剤師手当が月+2,3万円つくので、合計すると年収+100万円弱、という計算です。
なるほど……ちなみにすみません、薬局長とか、管理薬剤師の仕事って実は私あまりよく分かっていないんですけど、どういうことをやるんですか?
えっと、一言で言うと「雑務」が多いです。具体的には、いわゆる労務管理とか、あと薬の発注とか、薬の卸の営業の人とのやり取りとか、MRとのやり取りとか、病院のやり取りとか。
ただこういう雑務は正直誰でもできるんで……さっきも言ったようにマネージャーとして需要があるスキルというのは「人の管理をするスキル」なんですよね。例えば「採用」に関わる仕事、店舗見学の対応とか、面接の対応とか。
採用はたしかに大変なイメージがあります。
あと、薬剤師ってすぐ辞めるんで、辞めないような雰囲気作りをするとか。ちゃんとマネジメントをやってた人の話を聞くと、そこら辺の話がやっぱり出てきますね、すごく大変だったって。
薬局長とかドラッグストアの店長になるのって、具体的にどうすればなれるんですか?
基本的に「私やりたいです」という感じで声を上げれば、どこかのタイミングで管理薬剤師候補になるチャンスが与えられるはずです。
たださっきも言った通り、他の薬剤師をまとめるスキルを身に付けることが重要なので、例えば今自分がいる会社は、5人くらい薬剤師が居る店舗の店長になれる可能性があるのか? そのあたりを事前に確認しておいたほうがいいですね。
4.逆に、このスキルは年収が上がりにくいというモノ
これまでは、「年収交渉がしやすいスキル」ということでお話を伺ってきました。では今度は逆に、このスキルでは年収を上げられない、これは主張されてもちょっと困ってしまう、というのが何かあれば伺いたいと思うんですけど、いかがですか?
一番わかりやすいのは「資格」ですね。たとえば「専門薬剤師」とか「認定薬剤師」とか、「アロマテラピスト」みたいなもののことです。
あ、そうなんですか。「認定薬剤師」でもダメなんですか。
はい。資格は、転職相談を受ける際にアピールされる薬剤師さんが多いんですが、年収アップには特につながらないです。採用にも特に有利に働きません。
へぇ〜……でも確かに言われてみると、資格って持っていると「勤勉」とか「頼りになる」って印象はありますけど、それが即、年収アップにつながるというイメージはないですね。
まさにその通りです。私の過去の経験の中でも、資格が薬剤師さんの年収アップにつながった事例は無いに等しいです。例えて言うなら、「経理の人がFPの資格を持ってる」みたいなことかなと思います。
他にも何かありますか?
あとは、たとえば「皮膚科を極める!」みたいに特定の科目だけ専門性を高めようとするのも、年収アップにはつながらないので避けたほうが良いです。むしろ、転職時に年収を下げられてしまう可能性があります。
えっ、何で年収が下がっちゃうんですか?
なぜかというと、扱える薬品の数が総合科目の薬局に比べて圧倒的に少なくなってしまうからです。総合門前だとだいたい3000種類くらいの薬品を扱えるスキルが求められますが、単科だと300〜500種類くらいしか知らなくてもやっていけちゃうんですね。その状態で10年とか働いちゃうと、もう総合門前に転職するのは難しくなります。
なるほど。確かに、皮膚科の薬局って軟膏ばっかり出してるイメージがありますもんね。採用する側からも同じように思われているわけですよね。
その通りです。500種類しか薬品を知らないってことは、裏を返せば2500種類の薬品を知らないってことなので、入ったらまず色々教えないといけなくなっちゃうんですよ。だから採用しづらい。即戦力じゃないから。
でもこれは、知らないで入職してしまう人が多そうですね。特に新卒の薬剤師さんって、その辺のことを全然考えずに就職していそうですし。
そうですね。なのでいま単科の薬局で働いている薬剤師さんで、将来的にキャリアアップや年収アップを狙っている方は、なるべく早い段階で、もっと広く薬品数を扱える総合門前などに転職したほうが良いです。
まとめ
年収が上がるスキルと目安額
- コミュ力が高いと+20万
- 店舗全体のことを考えて仕事できると +50万
- マネジメントができると +50〜100万
- 資格を取っても年収は上がらない
- 特定の科目を極めても年収は上がらない
今日の内容は以上です。いかがでしたか?
ありがとうございました。全体的に知っている内容も多かったんですが、一番おもしろかったのは、年収のリアルな推移を伺えたことですね。こういう話って普段の会話の中ではまず出てこないので、とても新鮮でした。
そうですね。年収って、キャリアを考える上ですごく大事な要素のはずなんですが、薬剤師さんってそのあたりけっこう無頓着なまま就職したりしちゃうので、もっと広く知られればいいなと思っています。
あと、冒頭のほうで出た「薬剤師はコミュニケーション能力が低い」っていうのは正直ちょっとムッとしましたけど、でも、実際そういう部分はあるので、ちょっと痛いところ突かれたなって感じでした。
まあ、こういう話を面と向かって言ってくるキャリアアドバイザーは実際には居ないので(笑)キャリアアップを考えている薬剤師さんにはぜひ頑張ってほしいなと思うところです。
あと、今回は「年収交渉がしやすいスキル」というくくりで話しましたが、「年収を上げる方法」で言うと実はもっと簡単で効果的な方法があるんですね。先に答えを言っちゃうと「僻地に転職する」ことなんですけど、その話はまた次回くわしくできればと思います。
- 最終更新日:2019年5月17日
- カテゴリー:ドラおじコラム