転職ご相談事例
40代社会人からの薬剤師国家試験合格。これって現実的? 転職のプロに聞いてみた
こんにちは! 薬剤師のみどりです。
社会人になってから薬剤師資格をとりたい! と思い始めた方はいらっしゃいませんか?
大学を出たときには「国試の受験はいいかな……」って思っていたけれど、社会に出てしばらくしてから「やっぱり薬剤師になりたい!」って思う方、けっこう居るみたいなんです。当サイトにも、薬剤師試験の予備校に通い、合格を目指したいという40代の方からメッセージが届いています。
そこで今回は、「40代からの薬剤師試験合格……これって現実的?」というテーマで、ドラおじさんにズバリご意見を伺ってきました!
- たかしさん
- 43歳、男性
はじめまして、今年で43になるたかしです。
薬剤師の資格は取得しておらず、薬学部卒業後はずっとMRの仕事をしていました。しかし、最近になってちょっとMRの仕事がキツくなってきたのと、加えて、患者と直接関われる仕事がしたいと思うようになったのもあって、薬剤師の資格取得を考え始めました。
当初は資格取得に向けて意気込んでいたのですが、そもそも40代からの薬剤師資格の取得は現実的なのか、資格が取得できた場合に就職はできるのか、不安が出てきました。実際のところ、難しいんでしょうか?
ちなみに、無事に資格取得した後は地元の旭川で就職しようかと思っています。中心部から1時間以内で行ける範囲であれば場所にこだわりはありません。結婚はしていないですし、旭川は家賃や物価も安いので給料も300万以上であれば大丈夫かなと思っています。
よろしくお願いいたします。
1.40歳を過ぎてからの薬剤師国家試験は、至難ですよ
ということですが、どうでしょう? この方は薬学部は既に出ているので、あとは国試に受かりさえすれば良いという状況ですが。
申し訳ないんですけど、はっきり言って受験は全くおすすめできません。
登場人物紹介
- ドラおじさん
- 薬剤師専門の大手人材紹介会社に勤務していたアドバイザー。薬剤師転職のプロ。見た目はメタボだけど仕事はめちゃくちゃ頼りになるおじさん。(ドラおじさんの詳細はこちら)
- みどり
- 当サイトのナビゲーターで、都内の製薬会社でDI・学術担当として従事している設定の薬剤師。中の人は薬剤師が監修してます。全国の悩める薬剤師たちを代表して、きわどい質問をドラおじさんにバンバンぶつけていきます!
えーそうなんですか!? 何でですか?
受からないからです。まず、受かりません。薬剤師なんで、受かれば就職はまあ大丈夫なんですが、もし受からなかった場合、ご年齢的に再就職が難しくなり、さらにお金も無くなるという最悪の事態に陥ります。
あの……すいません。そんなに受からないものなんですか?
論より証拠ということで、数字で見てみましょう。下記は、過去5年間の薬剤師国家試験における合格率を新卒・既卒等の分類でまとめた表です。
たかしさんは4年制の既卒なので、「その他」に該当します。第99回の合格率、13%ですよ? キツくないですか?
しかもこの数字は、受験者数をベースにした合格率です。つまり、出願したけど受験していない人の分は母数に入れていないので、出願者数をベースにした場合の合格率はもっと低くなります。
う〜ん、でも! 合格率30%台の年もありますし、裏を返せば13%は受かっているわけですから、希望はあるんじゃないんですか?
いや、そりゃまあ希望はありますけど……。それにこの方の場合、20年ちかく受験勉強から遠ざかっていますよね。仮に、仕事をやめて勉強する時間を作れたとしても、学生時代のようなペースで勉強できると思わないほうが良いですよ。
何でですか。頑張ればいいじゃないですか。
あの、非常に言いにくいんですけど、正直40歳を超えると脳の衰えがですね……。
またそういうこと言って……。
でもこれ事実なんです。僕、これまでだいたい10人くらいはこういう「40歳を越えてから薬剤師国家試験を受けたい」っていう人と会ったことがあるんですけど、受かったって聞いた人、たったの1人です。
しかもその方、かなり良い大学を出ている方で。それでも1回目は落ちて、2回目で受かったってパターンでしたね。
え〜、じゃあどうしたら良いって言うんですかぁ〜?
まず、たかしさんが「どうしても薬剤師資格にこだわりたい」という方だった場合の話をしますね。既卒の合格率がだいたい20%だと仮定すると、5年は予備校に通って勉強漬けになる覚悟が求められます。
そうすると、まず必要になるのはお金です。予備校の授業料がだいたい年間100万〜120万円くらい。あとはどんなに節約しても、普通に生活するだけで年間100万円はかかりますよね。
ですから、受験勉強を開始する時点で、ざっくり1,000万円は貯金がないと話になりません。もしこれがない場合、薬剤師資格はすっぱり諦めたほうが良いです。
あの、予備校に通わずに自分で勉強するとか、バイトしながら勉強するとかじゃダメですか……?
無理!!! 週7日、朝から晩まで予備校に通いながら勉強しないと、40代で薬剤師国家試験に合格することはできないくらいに考えたほうが良いです。潔く諦めて下さい。
40過ぎてから薬剤師になるのってそんなに難しいのかぁ……。わたしだったら心が折れそうだなぁ……。
まあ、この方の場合、結婚をされていませんし、貯蓄もある程度はあると思いますから、あとは地頭が良かったりすれば、多少は希望が持てる状況であることは確かですけどね。
ただもし、たかしさんみたいな方が面談にいらっしゃったとしたら、国試に受かるのはまず無理なので、普通にMRを続けたほうが良いですよと僕なら言いますね。
はぁ〜、そうですかぁ……。
2.患者と直接関われる仕事なら、他にもありますよ
あの〜、国試に受かるのが難しいというのは分かったんですけど、それだけだと何の解決にもならないので、なんかもうちょっとマシな話してもらってもいいですか?笑
分かりました。そもそもですね、そんなに時間とお金を費やしてまで薬剤師資格にこだわる必要があるんですか?と僕は言いたいんですよ。
ど、どういうことですか?
この方のご希望って「患者と直接関われる仕事をすること」なんですよね。それって、薬剤師じゃなくてもできますよ。たとえば、准看護師、ヘルパー、理学療法士とか。
准看護師とか、特に良いんじゃないかと思いますけどね。
えっ? 准看護師って、そんなに簡単になれるんですか?
いや、簡単になれるって言うと間違いなく怒られますけど……少なくとも、薬剤師になるよりは現実味はあります。
実は私、勤務先の都合でしばらく看護師さんのキャリア支援も手伝っていたことがあって。その頃にそういう、40歳を越えてから准看になったって方を毎週のように見てたんですよ。
へー! じゃあ、そういう方がホントに結構いるんですね。看護のお仕事とかめっちゃ良いじゃないですか。
あの、具体的にどうすれば准看護師になれるんですか?
社会人から准看護師になるのに一番オススメの方法は、「看護助手」として働きながら、定時制の准看護学校に通うことです。
看護助手……っていうのは、すいません、よく知らないんですけど、「看護師さんの助手」的な感じの理解で良いんですか?
一旦それでオッケーです。詳しくはググって下さい。
話を戻すと、このやり方であれば、准看護学校の受験の準備期間も含めて最短2年強で准看護師になれます。かつ、働きながら資格が取れるので、金銭的なロスが極小で済みます。
そして何より、看護助手は無資格・未経験でも就職できますから、患者と直接関われる仕事をすぐにでも始めることができますしね。
えっ? じゃあ、准看護師にならずに看護助手のままでも良いんじゃないんですか?
看護助手のままだと、たかしさんのご希望である年収300万円に届かないんですよ。准看護師の平均年収は400万円強なので、准看であれば、たかしさんのご要望を十分に満たせるんです。
そっか〜。300万行かないのは、ちょっとキツイですね……。
あと、看護助手だと仕事の内容も正直、看護っていうより、介護に近い感じのものが多くなっちゃうんですよね。
たった2年我慢すれば良いだけの話ですし、将来的に正看護師になるという選択肢も持つことができることを考えると、やっぱり准看は頑張って取ったほうが良いと思いますよ。
今更ですけど、薬学部を卒業するタイミングでちゃんと薬剤師の資格を取っておくのって、大事なんですね……。
そうですよ。本当にそうです。たかが資格、されど資格ですよ。
いや〜でも、私がたかしさんの立場だったら、「薬剤師を諦めろ」とか「准看護師になれ」なんて言われてもそうそう納得できませんよ〜!
僕らアドバイザーは、事実をお伝えしてサポートすることしかできないですからね。強要はできませんから。精一杯悩んで、決断していただくしかないんです。
ちなみに、たかしさんは薬学部は出ているけど国家試験は受かっていないっていうパターンでしたけど、そもそも薬学部すら出ていないっていうパターンだと、もっとハードルが高くなりますよね?
そうですね。絶望的と言っていいレベルで難しいです。
……分かりました。笑 ありがとうございました!